企画通信-2022秋冬

霜降|霎時施

ジュピター

 

「人々と野山の動植物への冬支度の合図」

霎時施(こさめときどきふる)。

秋の長雨とは異なり、晴れていたかと思うと、さーっと降ってきて、

また間もなく上がってしまうような雨のこと。

 

「女心と秋の空」と象徴的に言われるように、「秋の空」は、降り始めたと思っていると、

いつの間にかやんで、晴れ間が見えるとまた降り始めるというように、

移り気で気まぐれな空模様のことを指しています。

 

ひと雨ごとに空気が冷えて気温が下がり、日ごとに肌寒さが増してく。

人々と野山の動植物の両方に冬支度を思い起こさせる合図であると言われています。

 

そんな自然の大地を思わすような素朴で味わいのあるシリーズ「ジュピター」をつくりました。

 

ジュピターは「木星」という意味。

太陽系にある惑星の1つで近年探査機から美しく表情を変える姿が捉えられている。

地球の土や鉱物を使って焼き上げる陶磁器もまた美しい化学反応が見られます。

 

 

ジュピターの形状はフラットな盛面と丸みのある小さな立ち上がりが特徴。

重なりもよく、家族分揃えてもコンパクトに収納できます。

 

土は小石が入った赤荒土を使用しています。

焼成することで石が表面にはじけ出ていたり、ボコボコとした表情が特徴です。

山から採取した土を多少調整するものの、ほぼそのままの土を使用します。

そのため採取する場所によって、石の荒さや、土の表情が変わります。

 

色展開はスノー、サンド、チャコールの3色。

スノーは滑らかな白釉の中に大きく大胆に散らばった鉄粉が星屑のように広がり、

滑らかさと荒々しさが混在した表情です。

サンドは名前の通り、ザラザラした砂や土壌のような質感。瑞々しい野菜やフレッシュな魚や肉の食材がより引き立ちます。

チャコールは漆黒ですが、土から現れる鉄粉や石目が控えめに現れ、銀河のような奥行きを感じます。

 

裏側は施釉をかける時に生じるダレやムラがはっきりと現れます。

釉薬が流れたあとが大胆に入り、釉薬の濃淡差によって焦げ感が生まれダイナミックな表情になります。

 

 

ゴツゴツとした荒土を感じる器の表情は料理を盛り付けることで食材の瑞々しさを生き生きと際立たせます。

ジュピターでいつものテーブルを宇宙空間に見立ててみるのも面白そうです。

 

WRITTEN by Yuko Hayashi

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