「不便益(ふべんえき)」という言葉があります。
効率や便利さだけを追うのではなく、あえて手間や時間をかけることで、より豊かな価値を生み出すという考え方です。
飲食店のなかにも、不便益を感じる場面があり、
たとえば、とんかつ屋で料理を待つ間に好みの粗さにゴマをする時間や、
甘味処で、食べる直前にお客様自身が餡を挟む最中など。
どちらも少し手間はかかりますが、
その瞬間に広がるゴマの香りや、作り置きでは味わえない「パリッ」とした食感は、
何よりのご馳走であり、心に残る体験になります。
■ ひと手間をかけることで、お茶はもっと美味しくなる

Cerchio 9sun / Konomi pot / Konomi cup
私たちの日常には、ペットボトルやティーバッグなど、手軽に楽しめるお茶であふれています。
便利ですが、その引き換えに、お茶本来の「豊かな香り」や「淹れる時間の心地よさ」は失われつつあります。
だからこそ今、あえてゆっくりと時間をかけてお茶の魅力を引き出す空間が、多くのお客様に求められています。
ここでご提案したいのが、常滑焼急須「菓(このみ)」を用いた、新しいおもてなしの形です。
■ あえてお客様に「最後の一滴」を委ねるという選択

Konomi pot / Konomi cup / Konomi saucer / Kurotsuchi haiyu thin rectangle plate S
急須にお湯を注いだ状態で客席へお持ちする。
これは一見、お店側にとっては「最高のタイミングで注いでもらえるか」という不安があり、オペレーションとしては少し不便(手間)かもしれません。
しかし、だからこそ他にはない特別な価値が生まれます。
「菓(このみ)」は、職人が本体と蓋を一つずつ手作業で摺り合わせ、気密性を高める「蓋摺り(ふたすり)」という高度な技術によって作られています。
蓋を載せた瞬間の、吸い付くような「ピタッ」とした感触。
その心地よさに触れたとき、お客様は自然と丁寧にお茶を淹れたくなります。
静かに湯呑へ落ちる最後の一滴。
その「待つ時間」まで含めて、お茶の体験になるのです。
この時間が、お茶を単なる飲み物ではなく、お店で過ごすひとときを彩る贅沢な体験へと変えてくれます。
常滑焼の蓋摺り急須「菓(このみ)」は、お客様に少しだけ手を動かしていただくことで、
その店でしか味わえない記憶を作ります。
何でも効率化される時代だからこそ、この心地よいひと手間が、お客様の心を深く満たすおもてなしになるのではないのでしょうか。