器をひとつ選ぶだけで、いただきもののお菓子や、いつもの飲み物も、その日の気分に寄り添う“ひととき”へと変わっていきます。「今日はどんな器にしよう。」その小さな選択が、“甘いものを味わう時間”を、ほんの少し特別なものにしてくれることもある。
今回は、話題のドバイチョコをきっかけに、春の午後を楽しむしつらえを考えてみました。
1.きょうの一皿 あの食感をもう一度
ある日、手渡された小さな箱。中に入っていたのは、ドバイチョコクッキーと呼ばれるもの。ドバイチョコは、話題になり始めた頃から気になっていて、一度だけ食べたことがありました。それ以来、あの独特の組み合わせをもう一度味わいたいと思いながらも、なかなかきっかけがないまま時間が過ぎていたところ。
そんなタイミングで届いたチョコレートは、トリュフのような丸い形。チョコレートのまわりにはマシュマロがコーティングされていて、カダイフの「ザクザク」とマシュマロの「もちっと」した食感を楽しめるのだと教えてくれました。
まだ食べていないのに、箱を開けただけで、その時間が少し特別なものになる予感がします。せっかくなら、器を選んで、きちんと“しつらえて”味わいたい。そう思い、テーブルへ向かいました。

2.どの器にする? 春らしさと、断面の色を思い浮かべて
まず思い浮かんだのは、ヴィーニュのプレート。ブドウの葉と実が描かれた絵柄は、どこか瑞々しく、これからの季節にぴったりの軽やかさがあります。

色はブルーかブラウンか。ブラウンはチョコレートと相性がよく、落ち着いた雰囲気。けれど今回は、断面に現れるであろうグリーンの色味や、春らしい空気感を引き立てたい気分でした。そう考えて、ブルーを選択。
さらに、ラウンドか菱形かでしばし迷います。丸いチョコレートをそのまま置き、もうひとつは半分に切って断面を見せたい。球体のやわらかさを引き締めてくれそうなのは、菱形のプレートでした。
飲み物は、同じヴィーニュのマグで。容量に余裕があるので、ミルクあわあわの紅茶ラテを淹れることにします。
3. 器をしつらえて かたちと色を整える
ヴィーニュの菱形プレートの中央に、チョコレートをふたつ。ひとつは丸いまま、もうひとつはカットして断面をこちらに向けます。ブルーの器の上で、チョコレートのブラウンと、内側にのぞくグリーンがくっきりと浮かび上がり、それだけで視線が自然と集まります。装飾のある器ですが、絵柄が主張しすぎず、甘いお菓子を大人っぽく受け止めてくれるところが、ヴィーニュらしさ。
隣には、濃いめに淹れた紅茶。ふわふわのミルクフォームが入ったヴェイエのクリーマーLを添えて。ブーちゃんピッチャーはメープルシロップを注ぐための器。
器を選んで配置するだけで、「これから味わう時間」が、きちんと整っていく感覚がありました。
4. いただきます 甘さを添えて、春を待つ午後
まずはそのまま、ひと口。チョコレートのコクのあとに、ザクッとした食感が立ち上がり、続いてマシュマロのやわらかさが重なります。断面から想像していた通り、カダイフのぎゅっと詰まった感じは、噛んだときの音でも伝わってくる。視覚だけでなく、聴覚でも楽しめる、印象的なひと粒でした。
マグに入った紅茶を仕上げます。ヴェイエのクリーマーを手に取る。中には、きめ細かく泡立てたミルクフォーム。白い泡をそっと落とすと、カップの中の色がふっとやさしく変わりました。ここで、ブーちゃんピッチャーSの出番。

中に入れておいたメープルシロップを、ほんの少しだけ紅茶へ。とろりとした琥珀色が、ミルクの白に溶け込み、香りがふわっと立ち上がります。砂糖とは違う、木の甘さを含んだやさしい香りが、紅茶の時間をぐっと大人っぽくしてくれる。スプーンで軽くひと混ぜして、マグを持ち上げる。手に伝わる温かさとともに、時間がゆるやかに流れていくのを感じます。
話題のお菓子も、特別でない日も。器を選び、注ぎ、甘さを少し添えるだけで、時間の質は変わっていく。春を待つ午後、ヴィーニュの器とともに味わう、静かで満ち足りたひとときでした。
