買ってきた“おいしいもの”を、ただ袋から出すだけではもったいない。そんなときこそ、器の力を借りて「見た目も気持ちも整う時間」をしつらえてみませんか？

今回は、ころんと丸くて可愛らしいフォルムのフルーツ大福。断面の果実の彩りに思わずときめいてしまう美しさでした。

1.きょうのひと皿　とろける果実を、器ごと味わう

駅前の和菓子屋さんでふと目を奪われた、宝石のようなフルーツ大福。翡翠のキウイ、陽だまり色のオレンジ、薄紅のいちじく。ひとつひとつ、まるで作品のように整えられていて──

見た瞬間、「これをおいしく、きれいに食べたい」と思いました。そのままでももちろん十分だけれど今日は、この美しい大福のために、器も丁寧に選びたい。静かな器が、果実の色をいっそう引き立ててくれるような、そんな余白と凛とした空気を持ったものを。小さなお菓子から始まる、ひとときのしつらえです。

2.どの器にする？　魅せるための、3つの選択肢

ころんと丸く、果実が透けて見えるフルーツ大福。この美しさをどうしたら器でいっそう引き立てられるだろう。
白で清らかに見せるのか、黒で凛とさせるのか、それとも深みのある色で、果実の彩りをやわらかく包み込むのか。３枚のプレートを並べて光の加減を確かめながら、フルーツ大福がいちばん美しく“映える一枚”を探します。

器によってお菓子の印象が変わっていくのが面白い。選ぶ時間そのものが“しつらえの楽しみ”です。

雪華 5.5寸高台皿 深緑

中央へすっとのびる陰影に、落ち着いた緑釉が果実の彩りを引き締めてくれる。背筋の伸びるような和の佇まい。

アソルティ Sプレート 黒

黒が引き立てる、やわらかな白。大福のまるみと白さを際立たせて、甘さをぐっと引き締める。

椿 丸皿 銀彩

光をまとう、凛とした空気感。瑞々しい果実の色と重なることで静かに輝き、特別感のあるおやつに。

そして選んだのは、「雪華 5.5寸高台皿 深緑」

・濃茶のような深い緑で、冬の訪れを表現したい

・フルーツ大福の形が単調な丸だからこそ、装飾的な器で引き立たせたい

雪華のもつ個性的な特徴が、フルーツ大福にしっくりくると思いました。

3.器をしつらえて　断面の“ごちそう感”を魅せる

そっと中央に並べると、大福のまるい輪郭と雪華の放射線が、自然と呼応するように重なり合います。光の入り方によって、器の陰影がすこしずつ変わり、果実の艶や透明感がきらりと輝きます。ほんの少し角度を変えるだけで、断面の果実が新しい表情を見せてくれる。器がまるで舞台のように、果実を主役にしてくれるのです。

隣に添えたのは「韻」の湯呑と茶托。お茶はジャスミン茶をペアリング。甘い果実と茶葉の香りが、ひとつの景色としてまとまっていくようです。カトラリーには「フリシティフォーク S」。スリムで繊細なラインが、凛とした雪華に似合います。器の印象をよりシャープに引き締めてくれるカトラリーです。

深緑の器が控えめに空気を整え、フルーツの瑞々しさを静かに浮かび上がらせる。“見てうれしい”と“味わって幸せ”が、ひと皿の中に共存しました。

4.いただきます　ふわりと甘い、特別な午後

フルーツ大福は、糸でカットすると綺麗な断面が楽しめます。いつものお菓子とは違うその工程も、心を少し弾ませてくれる時間のひとつ。糸をそっと押し当てて引くと、もち生地が静かに裂け、中から果汁がきらりと光を放ちながら、やわらかく広がっていきます。

露わになった断面には、果実の艶やかさと透明感、そして和菓子ならではの静かな気品が同居していて、まるで季節を一枚の絵に閉じ込めたよう。ひとつの大福の中に、小さな自然の景色が息づいているようでした。

ひと口食べれば、やさしい甘さのあとに果実の酸味が広がり、雪華の深緑がその彩りをそっと受け止めます。やさしく、すっきりとしたあと味が、ゆっくり広がっていきました。

日常のなかで、こんなふうに“心が整う”おやつの時間があること。それは、器があってこそ生まれる小さな贅沢。見た目だけではなく、口に運ぶその瞬間まできちんと包んでくれる器。何でもない和菓子も、とっておきの贈りものに変わったようでした。