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ラウカウと秋を待つ羊羹器とわたしの小さなしつらえ
vol.25

読了時間の目安:5分

暑さが少しずつやわらぎ、風に秋の気配を感じ始める九月。冷たいものばかりを求めていた季節から、温かいお茶が少しずつ恋しくなってきます。

「今日はどんな器にしよう。」その小さな選択が、季節の移ろいをゆっくり味わう時間へとつながっていく。今回のおやつは、とらやの羊羹「夜の梅」。小豆の風味をじっくり楽しみながら、ほっとひと息つく、初秋のしつらえです。

1. きょうの一皿 秋の気配を迎える羊羹時間

九月に入ると、朝夕の風が少しだけやさしく感じられるようになります。

暑さの峠を越えたころ、冷たいおやつから少し気分を変えて選びたくなったのが、とらやの羊羹「夜の梅」。切り口からのぞく小豆は、夜の闇にほのかに咲く梅の花を思わせることから、その名が付けられたそうです。落ち着いた佇まいは、長く愛されてきた理由そのもの。

今日は急須でお茶を淹れて、ゆっくり味わう午後にしようと思います。

2. どの器にする? 秋の夜長を思わせる一枚

羊羹は、とらやの「夜の梅」。秋の夜長を思わせるような一切れを、美しく引き立ててくれる器を選びたくなります。

候補にしたのは、3つ。

ヴィネット15㎝ 茶

茶色の小花柄が、小豆の粒を思わせるようでかわいらしい一枚。羊羹の色とも自然に馴染み、素朴で親しみのある雰囲気になりそうです。

椿 銀彩丸皿

銀彩のきらめきと丸い形が、秋の夜空に浮かぶお月さまのよう。夜の梅という名前にも似合う、静かで風情のある景色がつくれそうです。

ラウカウ 生成

ほんのり薄桃色を帯びた淡い色合いが、「夜の梅」の名前にある梅を思わせます。大きく描かれた紋様は、まるで花が咲いているよう。羊羹の濃い小豆色とのコントラストも美しく映えそうです。

悩んだ末に選んだのは、ラウカウ。

淡い色合いと大柄な紋様が羊羹を引き立てながら、余白まで美しく見せてくれる。この端正な景色が、今日の羊羹にはいちばんしっくりきました。

 

器が決まったら、羊羹を切り分けます。

実は、羊羹は約2.4cmほどの厚さが最もおいしく感じられるともいわれています。

ひと口では少し大きく、何口かに分けて味わえる絶妙な厚み。甘さや小豆の風味、なめらかな口当たりをちょうどよく楽しめる幅なのだそうです。今日はその厚さを目安に、一切れずつ丁寧に切り分けました。

3. 器をしつらえて 余白を味わう秋支度

切り分けた羊羹を、ラウカウへ。艶やかな濃い小豆色と、すっと立ち上がる美しい断面。淡い生成の器の上にのせると、その色がいっそう際立ちます。お茶は急須でゆっくりと。湯気とともに立ちのぼる香りが、夏とは少し違う、季節の訪れを感じさせてくれます。テーブルには、落ち着いたボルドー色のリネンを敷いて。

色を重ねすぎず、余白を大切に整えることで、羊羹とラウカウの表情が主役になるようにしました。

まだ暑さの残る季節だからこそ、秋を先取りするような色と器を少しだけ取り入れて。静かに季節を迎える、そんなお茶のしつらえです。

4. いただきます 秋を待つ、静かなひととき

器を選び、羊羹を切り、お茶を淹れる。ひとつひとつの何気ない所作が、季節を迎える準備のようにも感じられます。

羊羹をひと口。なめらかな口あたりのあとに、小豆の豊かな風味がゆっくりと広がります。

続いて温かいお茶をいただきます。ほどよい渋みが羊羹の甘さをやさしく受け止め、あと味をすっと整えてくれました。夏のあいだは冷たいものばかりに手が伸びていたけれど、こうして温かいお茶と羊羹を味わっていると、季節が少しずつ移ろっていることに気づきます。

ラウカウにのせるだけで、小さな一切れの羊羹にも特別な景色が生まれる。お気に入りの器とともに味わう和菓子の時間は、慌ただしい毎日のなかに静かな余白をつくり、季節の変化をゆっくり楽しませてくれました。

暑さの名残と秋の気配が交わる9月。そんな季節だからこそ味わいたい、穏やかな初秋のしつらえ時間でした。

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